ともぞー。介護医療の奮闘記

【介護支援専門員/介護認定調査員/リハビリテーション専門職/福祉住環境コーディネーター2級】

今知っておきたい認知症の基礎!症状から関わり方までを整理!

ケアマネジャーとして奮闘中のともぞーです。

今回は認知症について整理していきたいと思います。

 

高齢化社会になることに伴い、認知症患者も増えてくることが予想されています。2025年には5人に1人、つまり20%の人が認知症の診断を受けるという推計値が出ています。自分の身の回りで認知症をより身近に感じるようになるだけでなく、自分自身も認知症になる可能性が十分考えられます。

 

今のうちに認知症についての理解を深めていくことで、個々人ができる対応を考えていくだけでなく、社会全体で支えていく土台を作っていくことが大切と思っています。

 

しかし、認知症について理解を深めていくことは容易なことではありません。認知症と言っても、様々な原因があり症状も多岐に渡ります。

 

「何を言っても伝わらない」

「何をするか分からないから、いつも目が離せない」

認知症と頭ではわかっているけれど、一緒に生活しているとつい感情で気になってしまう…」

 

このような悩みを抱える家族、施設職員、病院職員は少なくないのではないでしょうか?

 

この記事では、前半に認知症の各型の症状を整理し、後半に私自身が実践してきた関わり方について紹介していきます。

 

アルツハイマー認知症

アルツハイマー認知症は、脳にアミロイドβやタウタンパクというタンパク質が異常に溜まってしまい、脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少したりすることで、脳全体が萎縮し認知症状が引き起こされると考えられています。

 

長年かけてタンパク質が蓄積し脳に影響を及ぼしているため、現在の医療では効果的な予防や根本的な治療は難しいとされています。

 

症状

症状の進行は人それぞれ、多岐に渡ります。

傾向としては、初期に短期記憶障害、見当識障害、認知機能障害が見られます。

まだこの時期では「忘れっぽくなった」「自分がダメになった」という自覚があるため、喪失感やうつ症状、不安が生じることがあります。

中期になると、即時記憶障害が出てきます。家族から「今言ったばかりでしょ」「何回も言ってるでしょ」といわれ、自分自身も「なんで忘れてしまったのだろうか…」と悩んでしまうことがあり、自尊心もボロボロになっていく場合があります。

中期には言語機能も低下してくるためYES、NOがはっきり言えなかったり、感情表現が言葉で表せなかったりします。

そうすると無気力になる、あるいは言葉で伝えられない代わりに暴力で意思表示をすることも生じてきます。

ただ、大脳皮質の運動や感覚野はまだ残存している時期のため、手足はこれまで通り機能する場合が多いです。

「すぐ忘れるし変な行動ばかりするけれど、足腰はしっかりしているんだよなぁ」

このように感じる場合も多いかと思います。

また、言葉ではうまく伝えられないですが、痛みは人の温もりはわかっています。触れ合い方には、特に注意していきたい時期でもあります。

しかし末期になってしまうと、日常生活動作がいよいよ自分ではできなくなっていきます。言葉が出ず、人と会話をすることが難しくなってくるため、人の意向を聞くことや、家族との関係性を築くことが困難になっていきます。

アルツハイマー認知症の進行過程は、このように進んでいくとされています。

症状を十分に理解し、進行を緩やかにするためにはどのように関わればいいのか、そして初期〜中期にかけて本人からどのような情報を聞き取るべきなのか、慎重に考えていく必要があります。

この初期〜中期にかけてどのように過ごすかが、その人のその後の人生を左右すると言っても過言ではありません。

 

治療

効果的な予防や根本的な治療は難しいですが、神経伝達物質の減少を抑える薬はあります。

物を覚えることに関わる神経伝達物質に「アセチルコリン」という物質があります。このアセチルコリンの減少を抑えるのが「コリンエステラーゼ阻害薬」という薬です(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどとも言われます)。

このような薬を医師から処方されることで、症状の進行を緩やかにしていくことは期待できます。

 

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞脳出血など脳血管障害によって発症する認知症です。

脳血管障害では運動麻痺や感覚障害、高次脳機能障害を呈することが多く、脳血管性認知症と言われても、何がそれ由来の症状なのかははっきりとは分からないことも多いです。複雑に症状が絡み合っているため、これが認知症の症状だとは一概に言えないところがあります。

 

症状

脳の様々な部位に障害を受けたことで見られる認知症のため、アルツハイマー型のような記憶障害や遂行機能障害が出現することがあります。

脳血管障害によって損傷されていない部位の機能は保たれているため、脳内ネットワークのバランスが崩れることで、できないこととできることが極端になっている場合もあります。

また、脳損傷部位によっては自動調節能が破綻し、脳血流量が変動してしまうことで、症状に変動が見られることが、脳血管性認知症の特徴の一つです。

さらに、感情のコントロールがうまくできないことも、その特徴の一つと言われています。日常の何気ない会話の中で突然泣き出したり、怒り出したりするため周囲の人とトラブルに発展することもあります。

 

治療

脳血管障害の再発により、症状が悪化することがります。そのため脳血管性認知症では、リスクファクターを抽出し再発を防ぐことが非常に大切になってきます。

脳細胞自体の治療は困難ですが、降圧剤や抗血栓薬、リハビリテーションによって状態が安定し、生活習慣を改善していくことで再発を予防することができます。

悪化させないという視点では、これらの方法に加えて周りの人たちの理解がとても大切になるます。

 

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、認知機能障害だけでなく運動機能や自律神経症状といった、パーキンソン症状を呈することが特徴です。

αシヌクレインというタンパク質が大脳だけでなく、脳幹部や末梢自律神経にまで広く異常沈着することが原因とされています。

※ちなみにレビー小体の”レビー”とは、この神経細胞を発見したレビー博士の名前が由来です。

 

症状

①パーキンソン症状②自律神経症状③幻視④うつ症状⑤レム睡眠行動障害の大きく5つの症状が見られます。

 

①パーキンソン症状

パーキンソン病のイメージがないと分かりづらいかもしれませんが、アクセルとブレーキの調整が効かない、動きに固さが見られる、そのような状態をイメージしていただければと思います。

「動作が小さい動きで、歩幅も狭くてちょこちょこと歩く」

「手足の震えがある」

「バランスが取れなくて、一度歩き出すと止まりたくてもなかなか止まれない」

というような症状が見られます。

その結果転倒しやすくなり、大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折などを受傷してしまうこともあります。

 

②自律神経症

日常生活面の支障としては、便秘やめまい、失神などが生じることがあります。

 

③幻視

「あそこに誰か立っている」「虫が壁を這っている」など、実際にはいないものに対して、見えているものとして訴えることがあります。

現実にないものが見えるという症状は他の認知症の特徴とは異なるため、幻視はレビー小体型認知症に特徴的な症状と言えます。

 

④うつ症状

比較的早期から、うつ症状を発症しやすいと言われています。

アルツハイマー認知症ほどではありませんが、記憶障害を併発することがあります。

 

レム睡眠行動障害

レム睡眠とは「夢を見ている」状態です。

その夢を見ながら行動を起こしてしまうため、寝ているのに手足をバタバタと動かしたり、奇声を発したりすることが見られます。

 

治療

パーキンソン症状に対してはパーキンソン病の治療薬が用いられますが、レビー小体型認知症は薬剤に対する反応が過敏であるため、医療機関との連携が大切になります。

定期的に受診ができる体制を整えておくことがポイントです。

 

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉を中心に神経変性をきたすことで生じます。前頭葉は理性を司るところで、いわゆる「天使と悪魔の囁き」のような「やりたい」「やってはいけない」をコントロールしてくれる部分です。

一方で側頭葉は、記憶や言語理解、聴覚や嗅覚を司ってくれる部分です。

大脳の前頭葉や側頭葉が萎縮すると、理性や言葉の理解、記憶力などが衰えてくるため、それに関連した症状が見られるようになります。

しかり理性や記憶力だけを見てしまうと「単に性格が変わっただけ」「年取って物忘れが始まっただけ」と思われがちで、病気の発見が遅れる傾向にあるため、違和感を大切にして早めに医療機関にかかることが大切になります。

 

症状

前頭葉症状がよく見られる行動型と、側頭葉症状がよく見られる言語型に分けると、症状を理解しやすいです。

 

①行動型

・自分の行動を抑制できない

・暴言暴力が見られる

・我慢ができなくなる

・同じ行動を繰り返す

 

②言語型

・話そうと思っても言葉が出なかったり、発音がうまくできなかったりする

・滑舌の悪い話し方が目立つようになる

・言葉の意味が分からなくなる

・日用品の名前が出てこない

 

前頭側頭型認知症の多くがこの行動型と言語型の両方を持っていますが、アルツハイマー認知症のような認知機能の低下は、多くはないのが特徴です。

このような症状が続くと、自分自身でもダメだと自覚し、相手からもダメだと言われるため、徐々に意欲が削がれて無気力な状態へと変化してしまい、喜怒哀楽の感情も無くなっていきます。

 

治療

どの認知症の型にも共通ですが、根治ということは現在の医療ではできません。

本人の精神状態を穏やかにし、そして安定するように対症療法がおこなわれます。

症状が重症化し、他者に影響を及ぼす場合には薬が処方されると思いますが、基本的には周りの人の理解が得られるような支援、その家族も含めた周りの関わりが重要となっていきます。

 

関わり方について

ここからは、私が実際に意識している関わり方について紹介していきます。

認知症の症状と治療に関して前述しましたが、全てに共通して「周りの人の理解」が大切です。

 

認知症と診断された人であること

認知症の方と関わる上で、「認知症と診断された人」の理解が大切です。
認知症であっても、1人の人として関わるようにとよく言われます。確かにそれは大事なことで、その方が誰かを不快な思いにさせようとしたり、迷惑をわざとかけようとしたりしているわけではありません。
医師の診察を受け、医師から認知症であることを伝えられただけであり、先入観や偏見で見ることは好ましくないです。
しかし一方で、認知症と診断された事実についても、しっかり受け止めなければならないと思います。
なぜなら、認知症という診断があるからこそ、各医療・介護従事者の専門性を発揮できるというメリットがあるからです。
医師の指示のもとで働く医療従事者は、医師からのオーダーを受けてその人の状態、生活能力、顕在能力と潜在能力を見極めることができます。
この専門的な見解がないと、支援をしたくても何をどのように支援したらいいか方向性が分からなくなってしまいます。
現実をしっかり受け止めるからこそ、具体的な対応策が見えてきます。
 

コミュニケーションの仕方

認知症の方とのコミュニケーションは、誰もが一度は悩んだことがあるのではないかと思います。私も日々悩みは尽きず「何度同じ話を続けているのだろう」「帰りたいというけれど、うまく説得ができない」などと困っていました。
そのような時に参考になったのが「バリデーション」というコミュニケーション方法です。
バリデーションとは「認知症の方の言動や行動を意味のあることと捉え、認め、受け入れる」手法です。
基本的な態度として、以下のようなものがあります。
①傾聴する
②共感する
③誘導しない
④受容する
⑤嘘をつかない、誤魔化さない
 
具体的なテクニックとして、以下のようなものがあります。
①レミニシング(過去の出来事について質問し、昔話をしてもらう)
ミラーリング(相手の動作や表情を真似する)
③タッチング(スキンシップにより、相手の感情に寄り添う)
 

実体験について

私は以前、病院に入院中で帰宅願望が強い高齢女性の方の対応に悩んでいました。

夕方になると「もう家に帰らないと。玄関はどちら?」と何度も話をし、その度に対応に苦慮していました。

しかしコミュニケーションの仕方を変えると、「帰りたいという言動の意味」と考えられるようになり、「なぜ帰りたいのか?」「帰って何をしたいと思っているのか?」「誰が家で待っているのか?」など、背景を探る会話ができるようになり、その高齢氏女性の思いを知ることができてきました。

その結果、その高齢女性は「家に家事も何もできない夫が1人でいるから、私が早く帰ってご飯の支度をしないといけない」という明確な理由があることに気づくことができました。

そして、対応方法として「夫に夕方電話を入れてもらい、ご飯は自分で食べれていることを報告してもらう」という協力をお願いしました。その結果、高齢女性の帰宅願望は減り、穏やかに過ごすことができるようになっていきました。

 

最後に

以上、認知症の各型と関わり方について紹介しました。

対応に正解はありません。医療、介護従事者一人ひとり何を意識するかによっても、相手の反応は全く変わってきます。

でも相手を理解しようとする姿勢がないと「認知症って大変だよね」「難しいよね」というやりとりだけで終わってしまい、解決がなかなかできなくなってしまいます。

理解しようとする姿勢があることで、お互いのより良い生活が実現すると考えています。

これらのことが、今後の皆さんのお役に立てれば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

ともぞー。

 

 

【介護保険制度の3つの基本理念】について

ケアマネジャーとして奮闘中のともぞー。です。

日々仕事に追われていると、「自分は何の仕事をする人間なのか」「自分の職種の職域はどこまでなのか」などなど、よく分からなくなってしまうことがあるかと思います。

 

そこで今回は、私たちケアマネジャーが働く上での指針となる「介護保険制度」についてまとめ、特に大事になる「3つの基本理念」について紹介していきます。

 

介護保険制度には「理念」があります。

理念は建物で言う「柱・軸」の部分に相当しますので、理念が定まっていないとぶれやすく周りに流され、正しい判断ができなくなってしまいます。

 

考えがブレたものでは、市場価値がなく徐々に衰退してしまいます。

介護業界で働く者としての立場を守るためにも、介護保険制度を理解しておくことは非常に大切なことと考えます。

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理念1.利用者本位

介護サービスを提供する側として、自分たちの価値観を押し付けてはいけない。ということです。

この理念の解釈で間違いやすい点として「利用者の言う通りにすればいい」と思ってしまうことがあります。

確かに利用者本位を考える上で、利用者の希望通りにすることも大切です。しかし介護保険制度における利用者本位では「生活の質(QOL)」「尊厳の保持」と言う視点を持つことが大切です。

例えば何日も入浴をせず、清潔を保てていない高齢者がいたとします。本人はお風呂を嫌い、入浴サービスを利用することを拒んでいます。

ここで「利用者の言う通り、お風呂に入らなくてもいい」と考えてそのまま放置してしまうと、入浴しないことで生じる「皮膚疾患」「感染症リスク」「異臭による周りへの影響」などを見落とす可能性があります。

お風呂に入らないという選択がQOLや尊厳の保持の視点として適した選択であるのか。その状態を続けることで悪化の方向に進んでしまうものはないか。など、あらゆる可能性を想定しつつ利用者の意向に沿った形の対応方法を提案する必要があります。

これは簡単なことではなく、日々悩むことの一つでもあります。

 

この利用者本位という言葉は、解釈する範囲が広すぎて少し分かりづらいかもしれません。そこで私は、この言葉を「利用者が大事にしていることを、大切にする」というように捉えるようにしています。

 

利用者が何を大事にしているからお風呂に入りたくないのか?

ゆっくりした時間を過ごしたいから?

人に見られることが嫌なのか?

寒くなることが嫌なのか?

 

あらゆる可能性を考え、対話の中で意思疎通を図っていきます。

 

理念2.利用者の選択の尊重

利用者本位と重なる部分はありますが、「利用者自身が選んだことを大切にする」ということです。

ここで注意する点としては、「利用者が直感で選んだことを良しとするわけではない」ということです。

例えば、知らない道を歩いている時に「次の道を右、左どちらへ行きますか?」なんて質問されても、答えようがないですよね。

左右の道はそれぞれどのような道で、どのような所へ着くのか、それを事前に教えてくれるだけで安心できるものです。

利用者の選択した意思は尊重すべきですが、選択肢それぞれに対して専門職である和たちたちが情報を伝えていくことがとでも重要です。

特にメリットやデメリットに関しては、専門職でなければ気付けない部分があります。

どちらの道を進んだとしても、それぞれにメリット、デメリットがあることを十分に説明した上で、利用者に選択をしてもらうことが大切です。

また、私たちが関わることでどちらかの道に誘導してしまっていないか、常に中立に立場で話を進めていくという意識も大切です。

 

理念3.自立支援

介護保険制度において、この自立支援という理念が一番重要であると、私は考えています。

介護というと「相手の代わりにおこなうこと」「お世話をしてあげること」というイメージがあるかもしれませんが、実際には自立支援をおこなっています。

利用者の持つ能力に応じて不足している部分は援助しますが、それ以外の自分でできることは方法を検討し自分でおこなってもらう。この考え方があるのとないのとでは、関わり方が全く変わってきます。

ただ、自立には様々な意味があります。

身体的自立、経済的自立、精神的・人格的自立など、見るべき視点は多岐に渡りますが、介護保険制度では特に「精神的・人格的自立」が重要と言われています。

例えば、体の自由は効かないけれど、ご飯は家族に作ってもらい、欲しいものは家族に頼んで買ってきてもらえる。このようなケースの場合は、身体的や経済的には自立していないものの、自分の意志でやりたいことを決めることができているため、精神的には自立していると言えるでしょう。

身体面や経済面での自立を考え出すと、際限がありません。この両方ばかりに着目してしまうと、自立支援の方向性を見失ってしまいます。

「自分がやりたいことを、いつでも自分で決めることができる」

この考えに対し、私たちは何の支援ができるのか。この考え方が大切です。

 

まとめ

介護保険制度には

1.利用者本位

2.利用者の選択の尊重

3.自立支援

この3つの基本理念があります。

 

介護保険サービスには様々なものがありますが、全てこの理念に則って動いています。

自分が何をしているのか分からなくなった時、この3つの理念のことを思い出すと方向性を見失わずに済みます。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ともぞー。